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軽い気持ちで検証
検証というほど精緻なことはできませんが、これまで撮影してきた散開星団の露出時間と、総スタック時間から、程よい落としどころを見出そうという試みです。
思えば、管理人は、かに星雲と散開星団からDSOの世界に入ったのです。
35年前くらいの望遠鏡で、目標天体の自動導入もできず、オートガイドもできず、長時間露出もできずにDSOに挑んでいる同士はいませんか?
しかも小口径望遠鏡で。
今回の検証は、そういうかなり少数派の皆さまにとって少しでも役に立てばと、実施するものです。
黎明期、ぎょしゃ座の散開星団を狙う
[撮影、画像処理をした機器、ソフトウェア]
ビクセンNEWポラリス-80M、D=80mmアクロマート、F=910mm、×0.5レデューサー、CMOSカメラASI462MC、モータードライブMD-5(ビクセン)、撮影・スタッキングソフトASILive
撮影場所:自宅ベランダ
ASILiveでライブスタック、露出10000ms、GAIN:Middle、GIMPによる色レベル。トーンカーブ補正
ぎょしゃ座散開星団M36
そもそも、管理人は、Samさん、まいくろさんはじめ、訪問者さまのおかげで、DSOの世界に入れたのです。
最初はかに星雲とM36でした。
2020年12月12日撮影 露出10秒間、総スタック時間100秒間
これくらいの露出と撮影時間で、十分散開星団は楽しめるのですね。細かい星も十分見えます。
これなら追尾誤差もほとんど回避できます。モータードライブの精度が下がっていても十分いけます。
ぎょしゃ座散開星団M37
同様に、露出10秒間、総スタック時間100秒間です。散開星団は明るい天体が多いから、これくらいで十分楽しめます。かなり昔のスペックの赤道儀とモータードライブで十分いけます。
成熟期 短時間露出で満足
当然35年前の赤道儀には、目標天体自動導入などというものはありませんから、画角への目標天体導入には目盛環を使います。
管理人の場合には、赤経方向を目盛環で追い、赤緯方向を微動ハンドルの微調整で追い込んでいくという方法をとりました。
ぎょしゃ座散開星団NGC1857
2021年1月3日撮影 露出10秒間、総スタック時間300秒間。
初の撮影時間300秒間への挑戦です。中央の細かい星を見るには300秒間撮影は必要でしたね。
しかし、この辺りから、追尾誤差との戦いが始まるのです。
おうし座散開星団NGC1647
2021年1月3日撮影 露出10秒間、総スタック時間300秒
少し物足りないですかね。そろそろ総スタック時間100秒間、300秒間を超えるときかもしれません。
迷い期 長時間露出と追尾誤差
露出時間、撮影時間を伸ばせば、たくさんの情報が写る、しかし、追尾誤差も大きくなる、ジレンマに陥ります。
そして、このころは、渦巻銀河や星雲に手を始めた時期で、撮影時間を無理して伸ばしていました。1200秒間くらいまでです。
それに合わせて、散開星団の露出時間や総スタック時間も伸びる傾向にありました。
オリオン座散開星団NGC1981
2021年1月4日撮影 露出10秒間、総スタック時間500秒間。かなり細かい星まで見えていますし、露出も総スタック時間もこれで十分かもしれません。何と言っても、追尾誤差が小さくて済んでいます。
欲を出した期 露出をより長く
露出を増やすほど細かい星が見えてきて、さらに楽しくなります。しかし、追尾誤差を振り切ることが出来なくなってきます。
オリオン座散開星団NGC2194
2021年1月19日 露出30秒間、総スタック時間600秒間。
ついに露出30秒間の世界に突入です。管理人のモータードライブでは、この辺りが限界でした。
しかし、総スタック時間を増やしてやれば、かなり細かい星まで見えます。
30秒は、散開星団の露出時間の限界値と考えます。
おおいぬ座散開星団M41
2020年1月20日撮影 露出30秒間、総スタック時間600秒。
細かい星まで見えるようになったのは良いですが、追尾誤差がかなり大きくなりました。写真を覆う黒い枠が追尾がずれた大きさです。ここまでずれると、当初予定していたレイアウトが崩れてしまいます。
星は良く見えるけど、誤差も大きくなるのが、露出30秒間です。
ふたご座散開星団NGC2158
2021年2月3日撮影 露出30秒、総スタック時間990秒。
かなり細かい星まで見えていて美しいのですが、追尾誤差も大きくなっています。
露出30秒は魅力ですが、弊害も大きくなってきます。
決断期 露出は数秒に
Samさんのアドバイスで、追尾誤差、ピリオディックモーションが出ない露出は10秒までとのことでした。実際、このころ露出を30秒間にしてライブスタックが進まないということが頻発していたのです。その原因が露出時間の長さでした。
そこで、露出は10秒を越えないことを決断。ただし、総スタック時間は十分に確保する、という方針に変更です。
露出を10秒間以下にしたら、ライブスタックが一気に進み始めました。
[撮影、画像処理をした機器、ソフトウェア]
ビクセンNEWポラリス-80M、D=80mmアクロマート、F=910mm、×0.5レデューサー、CMOSカメラASI462MC、モータードライブMD-5(ビクセン)
撮影及びスタッキングソフト:SharpCap 3.2 (64 bit)で撮影・ライブスタック
画像編集ソフト:GIMP(色レベル補正を実施)
撮影場所:自宅ベランダ
しし座棒渦巻星雲NGC2903
2021年2月24日撮影 露出8秒間、総スタック時間1216秒間
散開星団からは少しそれますが、この星雲は、30秒間の露出で渦巻が確認できていました。それを8秒間で挑戦したのですが、見事に渦巻を確認しました。追尾誤差も小さい。
星雲に対しても露出8秒間で戦えるというわけです。ただし、総スタック時間、撮影時間は長めにとると良いと思います。
星雲に対して戦えるのであれば、散開星団に対しても十分に対応できますね。
オリオン大星雲
2021年2月24日撮影 露出8秒間、総スタック時間1200秒間
オリオン大星雲も、十分に鑑賞に堪える画像になります。露出8秒間でかなりいけるんです。
おおいぬ座散開星団NGC2360
2021年3月3日 露出8秒間、総スタック時間520秒間
十分すぎる出来栄えです。露出は8秒間で十分と言えます。
まとめ
モータードライブでの追尾の精度が良ければ、30秒間で押し切ることもありだと思いますが、管理人の経験上、30秒間では、追尾誤差が生じることが多く、その分スタックが進まない状況に陥ることが多かったです。
そして、何とかライブスタックが再開されたとして、その時はすでに追尾誤差が蓄積して、画像に太い黒枠ができてしまったり、極端な場合には、目標天体が画角からはみ出ていってしまうこともあり得ます。
30秒露出は魅力ですが、追尾ズレ、ピリオディックモーション、画像の見栄えなどとのバランスを考えると、露出は10秒までが妥当と考えます。しかし、総スタック時間(撮影時間)は十分に確保して、細かい星まで見えるようにします。
以上、今回の検証の結果、散開星団の撮影においては、露出は10秒まで、総スタック時間は600秒以上、ということになりました。
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