目次
経緯
天体観測はとても楽しいです。
セッティングから、撮影、撮像、保存まですべての過程が楽しいです。
だから、多少寒くても、晴れていて、会社から帰るのが遅くなければ、毎晩望遠鏡を出します。
そうした毎日は充実しています。
そのすべての過程の中で、気になっていることがあります。
それは、とても大事な、天体の自動追尾の誤差についてです。
なぜ誤差が発生するのかについて、いろいろな説がありました。
その中で最近気が付いたのは、赤経クランプの締め具合の問題です。
先般、DSOの撮影で、撮影開始から誤差が発生したので赤経クランプを締めなおしたら誤差がなくなった、という事象がありました。
そこで昨夜は、赤経クランプと追尾誤差との相関関係について、実際に撮影しながら検証してみることにしました。
検証に使ったのは、ふたご座の散開星団NGC2129、いっかくじゅう座の散開星団NGC2232です。
高度がそれほど高くなく、ファインダーを覗く姿勢がアクロバティックにならないDSOをチョイスしました。
検証対象の導入
恒星のピント合わせ
一応撮影はしないといけないので、ピントぼけぼけはテスト撮影といっても嫌です。
バーティノフマスクを装着してきちんと確認しました。
ふたご座のポルックスで調べたところ、ピントはピッタリでした。
↓ポルックス 今回は月並みな恒星でピント確認です。普段使っていない恒星でピント合わせがしたいです。その方が新鮮味があるからです。
極軸設定の状況
折角の検証ですので、極軸設定はきっちりと行いました。(いつものことですが)
いつものように、SharpCapのPolar Align機能を使い、設定誤差14″まで追い込みました。Excellent!
これで検証への土台が出来上がりました。
基準恒星と目標天体の導入
ふたご座の散開星団NGC2129
昨夜は恒星が肉眼では見づらくて、ありふれた星が基準恒星となりました。
ふたご座のアルヘナ(等級1.9、赤経06h38m・赤緯+16°22′)です。
ここから目標天体NGC2129(赤経06h02m、赤緯+23°19″)まで、少しばかり距離があります。
導入は、4回ものトライを要しました。
いっかくじゅう座の散開星団NGC2232
目標天体NGC2232(赤経06h28m、赤緯-04°46′)。ここに迫る最短の恒星は結局おおいぬ座のシリウス(等級-1.45、赤経06h46m・赤緯-16°44′)でした。
というわけで、基準恒星はシリウスに決定です。こちらも距離が少しあります。
導入は、一発で成功。気分が良いです。
検証結果
[撮影に使用した機器、ソフトウェア]
赤道儀:ビクセン社スーパーポラリス赤道儀
鏡筒:SVBONY社SV503 102ED D=102mm・f=714mm・F値7、EDアポクロマート
カメラ:ZWO社CMOSカメラASI462MC
自動追尾:ビクセン社MD-6
撮影・スタック:SharpCap 3.2 (64 bit)によるノータッチライブスタック
画像編集:SharpCap 3.2 (64 bit) のヒストグラムによる炙り出し
使用フィルター:×0.5レデューサー、UV/IRカットフィルター
撮影場所:自宅ベランダ
NGC2129による検証
露出8秒間、総スタック時間904秒間、GAIN250、リアルタイムダーク補正使用。
にて撮影しました。
まずは、甘い締め具合で、撮影しました。その結果、約15分で赤い帯の分だけ西にズレていきました。
15分でこれだけズレてしまうと、1時間くらいの長時間ライブスタックには耐えられません。
そして、赤経クランプを堅く締めた場合はどうなるか、赤経クランプに力を入れた瞬間、赤道儀が東に少し回ってしまいました。(きちんと固定していなかった管理人のせいです・・・)
極軸設定が不完全では、このまま検証を続けても意味がなくなってしまいます。
ということで、極軸を設定し直し、別のDSOで仕切り直しすることにしました。
NGC2232による検証
露出8秒間、総スタック時間約1500秒から1700秒、GAIN250、リアルタイムダーク補正使用。
赤経クランプを甘く締めた場合
総スタック時間は1552秒で無視されたフレームは無かったので、そのまま自動追尾時間になります。
ほとんど追尾誤差は見られません。
感じとしては1時間以上の自動追尾を軽くやってのけそうです。
赤経クランプを固く締めた場合
何と、固く締めた方が追尾誤差が大きい結果となりました。追尾時間は1736秒間。
2分弱の追尾時間の違いで発生した誤差ではありません。
ちょっと寂しい結果です。
結局、赤経クランプの締め具合と追尾誤差との間に相関関係がないことを証明してしまいました。
追尾誤差と、極軸設定のズレとの関係
この検証を終えて、今一度極軸設定を行ってみました。約1時間強の撮影後に極軸がどの程度ズレているのか、あらためて調べたかったのです。
その結果は、2′48″のズレが発生していました。
SharpCapの評価は「Fair」ですので、それほどひどいズレではありません。
しかし、最後に撮影した、赤経クランプを固く締めた撮影においてズレが発生していた原因は不明です。
まとめ
検証結果は、赤経クランプは、しっかりと締めた方が追尾誤差が大きくなるというもので、想定していた結果とは全く異なるものとなりました。
ゆるく締めた結果追尾誤差が少なかったケースもあり、しっかりと締めた結果追尾誤差が大きかったケースもあり、赤経クランプの締め具合と追尾誤差との相関関係は無いということです。(もちろんゆるゆるの締め具合ではいけません)
実際に、追尾中に赤経クランプを固く締めなおしたら、追尾誤差が止まったという経験があるだけに、今回の検証結果は、がっかりするものでした。
結局、自動追尾は、地道に望遠鏡のバランスをとって、地道に高低・左右をノブなどでちまちまと調整して、少しでも追尾誤差が少なくなるように祈るしかなさそうです。
でも、何らかの法則性を見つけたいです。
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